せん断、抜き、絞りなど様々な種類があるプレス加工の中でもダントツで難易度が高いとされる精密深絞りプレス加工。
本記事では、精密深絞りプレス加工を得意とする「板鍛造・プレス加工技術.com」が詳しく解説します。
<目次>
精密深絞りプレス加工(英語:Deep Drawing)とは、ある程度高さがある容器形状の製品を量産する際に用いられる絞りプレス加工の一種です。
通常の絞り加工と精密深絞りプレス加工の違いは、製品径と高さの関係から定義されます。下図のように、前者は高さより製品径が大きいのに対し、後者は製品径より高さの方が大きくなります(深絞りと区別するために、浅絞りという呼び方もあります)。また、”精密”深絞りプレス加工という名前の通り、より高い寸法精度・形状精度が要求されます。
精密深絞りプレス加工の主な用途としては、モーターケースやセンサーカバーといった自動車関連部品、電子部品などがあり、通常の絞り加工よりもさらに高さが必要で、且つ真円度・同軸度などの要求精度が厳しいものがほとんどです。
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精密深絞りプレス加工では、精密深絞りプレス加工を可能にする設備と高精度・高品質を実現する技術力が重要になります。
精密深絞りプレス加工を行うプレス機は、以下のようなスペックが重要になります。
絞りプレスにおいてよく問題となるのが、偏肉やしわ、割れです。具体的には、フランジ部は母材の板厚より厚さが増しやすい一方、パンチ底部は板厚が減少しやすいため偏肉が生じてしまうことがあります。
このようなトラブルを回避するためにポイントとなるのが、金型設計です。
例えば、プレス時の圧縮応力により発生するフランジ部のしわ(面歪み)に対しては、ダイのクリアランスを製品径の約1.1倍にする、またはしわ抑え(ブランクホルダー)を取り付けて変形を抑制するといった対策が有効です。
また、一度で絞れる径には限界があるため、通常複数回に分けて絞ることになります。なお絞り回数は、絞り率から導かれます。板厚にもよりますが、一般に絞り率mは、
であり、これを元に最適な絞り回数を計算します。さらに、初絞りではダイのクリアランスを大きくとり、徐々にクリアランスを小さくして側面にしごき加工を加えることで板厚を均一にするべく、各々の絞り工程に最適なダイ・パンチ径や肩Rを決定します。
このように最適な金型設計を検討することで、内外径、穴深さ、真円度、同軸度といった要求仕様を満たすことができます。
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安定したプレス量産を実現するためには、量産性を考慮した金型設計、効率的にワークを搬送するための最適な搬送治具・搬送ロボットの製作が重要です。さらに、材料やプレス機に対する深い理解も欠かせません。
なお近年、軽量化ニーズの高まりや、食品医療向け製品で切削からプレスへの工法転換が増えていることから、非鉄金属のプレス加工もよく見られるようになりました。ただ、ステンレスやアルミ、銅などの非鉄材は、SPC材に比べてn値(加工硬化係数)が大きいため加工硬化しやすく焼き付きや割れが発生しやすいです。さらに、絞り性を示すr値(ランクフォード値)は、SPC材よりも小さく絞り性が低いため、絞り成形の難易度が格段に上がります。
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「板鍛造・プレス加工技術.com」を運営する株式会社池田製作所は、プレス加工の中でも特に精密深絞りプレス加工を得意としており、モーターケースをはじめとする絞り成形品の量産実績が多数ございます。
当社の設備体制について特筆すべきは、アイダエンジニアリングの精密成型プレス機UL-6000です。UL-6000は、「金型精度よりも高い精度の成型マシン」と言われるほど、高精度・高精密な成型機です。革新の9点支持構造、高剛性リングフレーム、スライドギブクリアランス”0”を採用し、驚異的に向上した動的精度によって金型寿命は数十倍から百倍近くまで大幅にアップしています。成型中にスライドが横ブレせず限界を超えた新次元の成型が可能です。
また、当社は、金型設計から加工、後工程から検査まで社内一貫生産体制にて製造を行っております。そのため、試作、金型・搬送治具・溶接治具の設計・製作、溶接、加工、検査など、様々な分野の技術を自社で揃えています。
金型設計では、金属プレス加工技能士1級取得者や2級取得者からなる5名の設計スペシャリストが、CAEによる解析シミュレーションなどを駆使して、量産性やメンテナンス性も考慮した最適な設計を行います。また、搬送装置・搬送ロボットや溶接治具の設計・製作は自社で行っており、ノウハウを豊富に持っています。さらに、非接触3次元測定器、重ね合わせ検証が可能な3Dスキャナ式3次元測定器なども保有しており、高度な品質保証体制を整えております。
当社の精密深絞りプレス加工で製作したプレス加工品の事例をご紹介します。
こちらは、自動車用のモーターケースです。
要求精度が非常に厳しい製品であり、特にベアリング部の内径寸法公差はレンジで0.015以内です。加工方法についてはノウハウと高い技術が要求されます。材料は成型しやすいSPCC(冷間圧延鋼板)なので、金型のチューニングは比較的対応しやすいと言えます。
こちらは自動車向けのABS用モーターケースです。
製品サイズφ70mmxH60mmで、材質は板厚1.6mmで絞り性の高いSPCE材を採用しています。プレス加工後には、亜鉛メッキ処理をすることで防錆効果を高めています。
A.590Mpaのハイテン材で実績があります。
アルミ材は試作の実績が、ステンレスは試作~量産まで実績がございますので、お気軽にご相談ください。
A.実績としては0.6mmの薄板での絞り加工の実績がありますが、設備上では0.3mmまで対応可能です。
また最大板厚については、8mmまで対応可能です。形状や材質によりますので、詳細はお問い合わせください。
A.設備や加工材料の種類によって異なりますが、φ数mmからφ500mm程度まで対応可能です。
ただし製品の直径が大きくなると、加工機械の性能や加工精度、材料の強度などの問題が生じるため、他の加工方法が適しているケースもありますので、その際はご提案させていただきます。
板鍛造・精密深絞りプレス加工技術によるモーターケース・モーターブラケットのコストダウンのポイントをまとめた技術ハンドブックをご用意しております。
無料でダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。
株式会社池田製作所は、金型設計から各種プレス加工、カシメ、溶接、カチオン電着塗装、高精度検査まで、すべて社内で一貫製造する創業75年の板鍛造・プレス加工のプロフェッショナルです。
100台以上のプレス加工機に裏打ちされた設備力を背景に、板鍛造・プレス加工の試作から10万個/月
の量産までをワンストップで対応いたします。また、長年培ってきた加工ノウハウと実績にもとづく
図面段階からの設計提案も得意としており、品質向上やリードタイム短縮、コストダウンに関する各
種VA/VE提案を積極的に行っております。
精密深絞りプレス加工なら、池田製作所にお任せください。