塑性加工の一つであるプレス加工ですが、加工の方法によりいくつか種類があります。
今期時では、そのうちの一つである順送プレス加工について、そのメリット・デメリットや
その他のプレス加工との違いについて、解説をしております。
プレス加工メーカーである当社が手掛けた順送プレス加工品の事例もご紹介しております。
<目次>
順送加工とは、順送金型を用いてプレス加工を行う加工方法です。
順送金型とは、単一の金型に複数工程が均一ピッチで配置されているものを言います。
材料をピッチ分順送りしていくことで、複数工程のプレス加工を無人で行うことが可能となります。
そのため、大量生産品に順送加工が用いられることが多いです。
また、順送加工に用いられる金型は、単発金型に比べ高価ですが、単発型は単一工程の加工しか行えない一方で順送型は複数工程の加工が行えるので、多くの工程を必要とする場合には順送型を用いることが多いです。
しかし、順送加工は、材料がつながったまま各工程の加工が行われるので、バリが発生しやすいです。
そのため、品質の高い製品を生産するためには、バリを抑制する工夫が必要となります。
上述しましたが、順送プレス金型は、一つの金型の中に、複数工程が組み込まれていることが大きな特徴の一つです。
順送プレス金型は、複数工程が組み込まれていることもあり、複雑な構造をしています。
そのため、高価な金型製造費用がかかってしまいますが、順送プレス金型を使用することで、非常に生産性高くプレス加工を行うことが可能です。
順送プレス加工には、メリットがあれば、デメリットもあります。
加工方法を選定するには、各工法のメリット・デメリットを知る必要があります。
ここでは、順送プレス加工に関する、メリットとデメリットを説明いたします。
順送プレスは、大量生産が可能な工法です。サイズや形状にもよりますが、1分間に40個~250個加工も加工することが可能です。
順送プレス加工は、複雑な形状の部品でも、コイル材を使用すれば、自動的に複数工程加工を行うことができるため、加工スピードが速く、効率の高い工法であると言えます。
順送プレス加工に必要な金型は、複数工程含まれるため、大型で複雑な構造をしています。
そのため、金型の製造費用が高価になってしまうことがデメリットになります。金型費用が高価であることから順送プレス加工は、イニシャルコストが大きくなってしまうため、少量生産では償却出来ないことが多く、大量生産品の場合にコストメリットがはたらく工法であると言えます。
単発プレス加工とは、一つのプレス加工工程を一つの金型で行う工法のことを言います。
プレス加工の中では最もシンプルな工法です。
単発プレスは、人の手による操作を前提とした工法ですが、近年では、単発プレス機を複数並べて自動搬送装置を取り付け、無人で、多工程の加工を可能にしたタンデム加工もよく見られます。
単発プレスは、一工程のみの加工のため、順送プレス加工のように、複雑な形状の加工や大量生産には向きませんが、金型費用はプレス金型の中でも最も安く、少量生産品や大物の加工に向いている加工方法です。
トランスファープレスは、単工程型を複数並べ、各工程間で被加工材を搬送し、加工を行う工法です。
順送プレスが一つの金型内に複数工程組み込まれているのに対し、トランスファープレスでは、単発型の金型が、各工程ごとに用意されています。
トランスファープレスは、順送プレスと同じく、大量生産に向いた工法です。
違いは何かというと、生産性と、加工可能な形状、歩留まりになります。
順送プレスが1分間に40~250個(SPM40~250)のところ、トランスファープレスではSPM25~30ほどです。そのため、トランスファープレスが大量生産に向いているとはいえ、順送プレスに生産能力は劣ります。また、トランスファープレスは、プレス機間で被加工材の搬送が必要です。搬送機構が必要なトランスファープレスでは、型の製作費用に加え、設計費用がかかります。
一方で、トランスファープレス加工は、歩留まりのよさがメリットのひとつと言われており、歩留まりは順送プレスより優れています。また、順送加工では、絞りや成形製品において外形が大きく変化するものには適用しづらいところ、トランスファープレス加工は、そのような形状でも加工が可能という強みを持ちます。
当社では5台のプログレッシブ加工機を保有しております。下記はそのスペック一覧表です。こちらの範囲内の部品であれば対応可能ですので、ご依頼予定の方はあらかじめご覧ください。
設備名 | ダイハイト (上限) | ダイハイト (下限) | パス ライン | スライド サイズ | ボルスター サイズ | 生産方法 |
DSF-N2-2000 1号機 | 500 | 390 | 250 | 1,850~650 | 2,150~840 | 左から右 |
DSF-N2-2000 2号機 | 500 | 390 | 250 | 1,850~650 | 2,150~840 | 左から右 |
DCP-400 | 650 | 500 | 350 | 1,850~1,300 | 1,850~1,300 | 左から右 |
PMX-500 | 700 | 600 | 350 | 2,150~1,350 | 2,150~1,350 | 左から右 |
PMX-800 | 700 | 600 | 350 | 2,500~1,500 | 2,500~1,500 | 左から右 |
当社では7台のトランスファープレス機を保有しております。下記はそのスペック一覧表です。こちらの範囲内の部品であれば対応可能ですので、ご依頼予定の方はあらかじめご覧ください。
プレス | NC2-250 | NCS-3000 1号機 | NCS-3000 2号機 | NCS-3000 3号機 | NCS-3000 4号機 | E2Q-500 1号機 | E2Q-500 2号機 |
ダイハイト (上限) | 550 | 585 | 585 | 585 | 585 | 1070 | 1070 |
ダイハイト (下限) | 430 | 485 | 485 | 485 | 485 | 670 | 670 |
加圧能力 | 2500KN | 3000KN | 3000KN | 3000KN | 3000KN | 5000KN | 5000KN |
プレス ストローク量 | 280mm | 330mm | 330mm | 330mm | 330mm | 710mm | 710mm |
能力発生位置 | 7.0mm | 5.3mm | 5.3mm | 6.0mm | 5.3mm | 10.0mm | 10.0mm |
パスライン | ボルスター上面より280 | ボルスター上面より280 | ボルスター上面より280 | ボルスター上面より305/330 | ボルスター上面より280 | ボルスター上面より450 | ボルスター上面より450 |
スライド サイズ | 2100×700 | 2400×900 | 2400×900 | 2400×900 | 2400×900 | 3500×1200 | 3500×1200 |
ボルスター サイズ | 2400×920 | 2600×1200 | 2600×1200 | 2600×1200 | 2600×1200 | 3570×1300 | 3570×1300 |
生産方法 | 左から右 | 左から右 | 左から右 | 右から左 | 左から右 | 左から右 | 左から右 |
ST数 | 5/6/7/8 | 5/6/7/8 | 5/6/7/8/10 | 5/6/7/8/10 | 5/6/7/8/10 | 6/8/11 | 6/8/11 |
上型重量 | 1650kg | 2300kg | 2300kg | 2300kg | 2300kg | 2000kg | 2000kg |
メイン モータ | 37kw 4P 200v | 37kw 4P 200v | 37kw 4P 200v | 37kw 4P 200v | 37kw 4P 200v | 75kw×4P 400v | 75kw×4P 400v |
リフト ストローク | 0-60 | 0-60 | 0-60 | 0-60 | 0-60 | 50 (~80) | 50 (~80) |
フィードバー 内幅 | 350 | 350 | 350 | 350 | 350 | 450/550/750 mm | 450/550/750 mm |
ダイ クッション | 対応可 | 対応可 | 対応可 | 対応可 | 対応可 | 対応可 | 対応可 |
ディスタッカー | NC2-250 | NCS-3000 1号機 | NCS-3000 2号機 | NCS-3000 3号機 | NCS-3000 4号機 | E2Q-500 1号機 | E2Q-500 2号機 |
ブランク対応 板厚 | 0.6mmから3.6mm | 0.6mm~3.2mm | 0.6mm~3.2mm | 0.6mmから3.6mm | 0.6mmから3.6mm | 0.6mm~3.2mm | 0.6mm~3.2mm |
ブランク対応 サイズ | ○105から□350 | □120から□350 | □120から□350 | ○105から○350 | ○120から○350 | ○200から○500 | ○200から○500 |
当社が過去に順送プレスで製造したプレス加工品をご紹介いたします。
こちらはSPHC製ギヤです。UL-6000(6000KN)を使用した板鍛造加工のため、偏心荷重にも対応可能です。またプレス加工機の剛性も優れており、高い精度を確保して生産しております。
以前は別のプレス加工メーカーにお願いしていたとのことでしたが、プレス後に切削加工を行い完成させていたため、コストダウンをしたいとのことで池田製作所にご相談いただきました。そこで当社では…
マニュアルトランスミッション(MT)の自動車で、ドライバーの意思でダイレクトに変速機を操作するためのシフトレバー用ブラケット部品です。材質はSPH440HYで、板厚は7.0mmの厚板です。
こちらの製品には7.0mmの厚板を使っているため、曲げ加工時のスプリングバック対策も考慮した工程設計が必要でした。またブラケットに必要な穴位置が、曲げ加工後にプレス加工で成形するのが難しい位置にあったため、工程数は増えてしまいますが、社内で切削加工を行い対応いたしました。さらに、製品の中央部にはピンが圧入されており、プレス ⇒ ピン穴の切削 ⇒ ピン圧入の3工程で製造いたしました。
こちらは車体補強用のフレームです。サイズは100*100、材質はSPH440Wで構成されています。
このフレームは車体との締結部位になるため、フレームの素性や出来栄えにより、車全体の剛性感や乗り心地が決定する、非常に重要な部品です。このような用途ゆえに、部品自体の強度確保が必須となるため、6~7mmの厚板を成形するプレス技術のノウハウが必要な製品でした。また絞り部の板厚保持や取り付け面の平坦度を確保するために、1度成形した後に再度成形加工するリストライク工程で高い圧力をかけて成形を行い、ショックラインの高さも0.3以内で製作を行うなど、ナックルプレスの優越性を活かした製品です。
こちらはドラムブレーキ用のパーキングレバーです。ドラムブレーキは、車輪とともに回転するブレークドラムの内側にブレーキライニング(摩擦材)を張ったブレーキシューを押し付けることによって制動・原則停止させるためのブレーキシステムです。
レバー部品自体は厚板ハイテン材で、ラインペーサーで生産を行いました。一部の摺動面にせん断面の確保指示がありました。またラインペーサー内でU曲げ成形を行っております。プレス成形後の熱処理とメッキを配慮して、細長の形状での平面度の寸法保証も工夫して工程設計しています。
株式会社池田製作所は、金型設計から各種プレス加工、カシメ、溶接、カチオン電着塗装、高精度検査まで、すべて社内で一貫製造する創業75年の板鍛造・プレス加工のプロフェッショナルです。
100台以上のプレス加工機に裏打ちされた設備力を背景に、板鍛造・プレス加工の試作から10万個/月
の量産までをワンストップで対応いたします。また、長年培ってきた加工ノウハウと実績にもとづく
図面段階からの設計提案も得意としており、品質向上やリードタイム短縮、コストダウンに関する各
種VA/VE提案を積極的に行っております。
プレス加工なら、池田製作所にお任せください。